石動のブログ

アニメやら特撮やら映画やらの感想を書きます。

とある魔術の禁書目録 旧約&新約 好きな巻ランキング

 どうも、石動です。

 ここ最近は一つの作品について長々と語る記事ばかり書いていて、まあとても楽しくはあったんですけど、それなりに疲れてしまったわけなんですよね。たまには息抜きみたいな記事を書いてみたいなあ、と。

 そこで思いついたのがこの禁書ランキングで、常日頃から頭の中でこねくり回してる(故にノータイムで文字にできる)禁書への愛を、あくまで「お遊び」でしかないランキングという形で残しておこうかな、という次第です。ちょうど(?)新約も完結したので、いいタイミング…かもしれない。

 まあ、思ったよりボリュームが増えて、割とカロリー高めになってしまったのですが、そこはご愛嬌ということで。

 当たり前の話ですが、作品の優劣を決めたり、特定の作品を貶めたりする意図はありません。僕が僕の好きな物を好きなように語る…それだけの記事なので、もし読んでくださる方がいるのならば、肩の力を抜いて、気楽に楽しんでくださると幸いです。

 

 

 

 


※差別化のために、『とある魔術の禁書目録』を旧約、『新約 とある魔術の禁書目録』を新約と呼称することにします。

 

 

 

第10位

旧約㉒

とある魔術の禁書目録(22) (電撃文庫)

 旧約⑳から始まり、怒涛の勢いで展開した「第三次世界大戦編」の完結編であり、『とある魔術の禁書目録』という作品の魅力をこれでもかと詰め込んだ総決算。主軸となる三人のヒーローのストーリーの決着の付け方が本当に見事で、インデックスに自身の秘密を打ち明ける上条さん(「」とその時の言葉が読者にはわからない=二人だけしか知ってはいけない、というのが最高)、作中で初めて穏やかに笑い、翼を白く染めながら彼の大切な者のために飛翔する一通さん、今まで戦ってきたむぎのんを守るために拳を握り、最高のワガママを突き通す浜面と、作品を追いかけてきた読者は涙やら鼻水やらを垂れ流しながらページをめくることになる。

 さらに、各地で大切なもののために戦うキャラクター達(先述のヒーローも含む)が描写され続けることで、「世界はそんな簡単に壊れない」「手を取り合って、共に戦えば、困難を乗り越えられる」というベッタベタなテーマを掘り下げながらちゃんと熱い展開になっていて、そこは流石だなあ、と。その構成の代償として、場面転換が多くどこか忙しない印象になってしまった感が否めないのは残念だが、それを含めて、正に旧約の総決算なのである。

 

 

 

第9位

旧約⑧

とある魔術の禁書目録(8) (電撃文庫)

 禁書のイメージとして、やりたいことが先行して構成が歪になる事例がままある、というのがある。無駄な展開、無駄な説明、無駄なセリフ。そういったものが、割と素人目でも目立っていることがある。巻によっては視点変更がやたら多くて読みにくくなったりもする。その「やりたいこと」が滅茶苦茶に良くて、それのもたらす勢いと熱さでそれらを押し切っていて、むしろそれはある種禁書の強みであり魅力とも言える。なので完全に否定できるものでもないというか禁書ファンとしてはそういった指摘には「いや逆にね」と反論したくなるのだが、それはそれとして、エンタメ小説として構成が綺麗にまとまった禁書も見てみたい、と思うことはある。そしてそんな自分の思いに割と初期の段階で応えてくれた、それにより「こういうまとまった話も書けるのを、勢いやコンセプト重視で意図的にやってるんだな」と思わせてくれた、それが旧約⑧なのである。

 読めば読むほどその緻密さがわかるほどに、この巻の構成は非常にしっかりしている。話の根幹となる黒子サイドは一度敗れた相手にリベンジする、という王道な展開をちゃんとやりきってるし、その脇で展開される上条さんサイド、一通さんサイドのお話も最低限の描写で彼らの魅力を遺憾無く発揮させ、物語に刺激を与えている。後輩のために怒る御坂の姿もかっこよく(しかも彼女は禁書では乙女なことが多いので真っ当にかっこいいシーンは案外少なく、かっこよさが際立つ)、あまり縦軸が強くなく、それぞれの話の独立性が強かった禁書初期だからこその傑作であり、僕にとっては禁書がこの巻を出したという事実により元来の性質の恣意性を強調してこちらに目配せしてくれた、そんな「安心」と「信頼」のエピソードでもある。

 

 

 

第8位

旧約⑱

とある魔術の禁書目録(18) (電撃文庫)

 イギリス王室編の後半戦であるこの巻の魅力は、とにかく「旧約禁書らしいこと」に尽きる。旧約禁書らしいってなんやねん、という話だが、個人的には「ひたすらにこっちを盛り上げてくる熱い展開」が旧約禁書最大の魅力だと思っていて、この巻ではそれが存分に楽しめた。騎士団長と、ウィリアム・オルウェルこと後方のアックアの因縁の対決は燃えたし、「連合の意義」でカーテナの力を与えられた国民が総出で立ち上がるシーンも笑いながらも胸が熱くなったし、ラスト付近からの第三次世界大戦編へ一気に突入する感覚も素晴らしい。ただただ戦闘&熱い展開を垂れ流すだけじゃなく、途中の食事のシーンで一度だけスピードダウンするのも気がきいてる。もしあの下りがなかったら、この巻は読者を熱量と脳汁の過剰分泌によって死に至らしめる恐怖のラノベになっていたことだろう…というのは少し言い過ぎだが、それほどに「旧約禁書らしく」面白い、それが旧約⑱なのだ。

 

 

 

第7位

旧約⑮

とある魔術の禁書目録(15) (電撃文庫)

 いやー、いいんですよ、15巻。すごくいい。何がいいって、独特の乾いた空気感がめちゃくちゃいい。学園都市暗部のヤバさがすごく伝わってくる。思わせぶりに登場した奴も、強キャラ感を放っていた奴も、実際めちゃくちゃに強い奴も、さらっと禁書の世界の謎に食い込んでいた奴も、容赦なく死んでいく。歴代でも屈指の多さを誇り、それぞれのデザインもちゃんと存在するキャラクター達の命が非常に軽い。終盤の第1位VS第2位で一通さんが言った「もしかしたら、あいつにも戦う理由があるのかもしれない。守るべきものがあるのかもしれない。だが、そんなことは関係ない」的な独白が、この巻を象徴している。ただ乾いているだけでなく、上条さんにそげぶされた浜面がある意味でずっと無能力者を差別してきた自分自身に気づいたり、過去のトラウマを結標さんが乗り越えるたりと、こちらの心を熱くしてくれる要素も満載で、紛うことなき神巻である。

 

個別感想記事はこちら

sasa3655.hatenablog.com

 

 

 

 

第6位

新約⑮

新約 とある魔術の禁書目録(15) (電撃文庫)

 「北欧の魔神編」後半の素晴らしさに打ちひしがれ、最高なエンディングを見届けてから、少し落ち着いていた僕の禁書熱を再燃させた巻。その特徴としては、上条さん主役にしては珍しく全編にわたって雰囲気が暗いことが挙げられる。師を超える「木原」になることを決めた唯一さん、その戦略によって引き裂かれる上条さんとクラスメイトの友情、去鳴から語られる上里勢力の異常性、上条さんに追いつきたくて力に手を伸ばす御坂など、具体的なエピソードも重めの話が多いというのもあるが、それを除いてもどこか語り口が沈んだような面持ちなのである。

 それでいて禁書特有の勢いと熱さモリモリの展開も残っており、自分自身を見つめ直し武器を捨てる上条さんと、右腕を失ってやっと上里勢力の本当の気持ちに気づいた上里の姿が、暗闇の中で強く光を放つ(この「熱さ」が独立したものではなく、暗い部分としっかり関連しているのが良い)。物語の隅から隅まで見どころばかりで、ノンストップで読み切れてしまう、そんな傑作だったな、と。

 

 

 

第5位

新約㉒リバース

新約 とある魔術の禁書目録(22) リバース (電撃文庫)

 新約のラストを飾った作品。大きな区切りを迎え、新シリーズに突入する前に、上条さんの記憶喪失問題と食蜂の過去に注目し、「上条当麻とは何か」ということをもう一度定義する。上記の新約⑮とはまた違った視点で描かれる「上条当麻らしさ」は斬新ですごく面白かったし、彼がもう一度『ヨハネのペン』状態のインデックスを救い、ちゃんと「羽」を払うシーンは灰村さんの挿絵を含めて最高に感動した。インデックスにまともな出番があったり(上条さんと学園都市に帰ることを決めるシーンは泣く)、最後の皆が日常へ戻っていく感覚だったり、自分の見たかった展開が多く見られたのもポイント高し。

 

個別感想記事はこちら

sasa3655.hatenablog.com

 

 

 

第4位

旧約⑳

とある魔術の禁書目録(20) (電撃文庫)

 第三次世界大戦編にて禁書のクライマックスを描く前に、メインとなるヒーロー達のスタンス、戦う理由を明確にした作品…と書くと、なんだかまだまだ前哨戦で、あくまで前フリだけの巻のように思われるかもしれないし、確かにお話のポジションとしてそういう役割を担ってはいるのだけれど、圧倒的な完成度をもってして単品のエピソードとしてもとても楽しめるようになっている。特筆すべきはやはり巻の終盤に発生する上条さんと一通さんの再開からの再戦だ。満を持してこの二人がついに出会う、というだけでなく、上条さんと一通さんが犯し、負い目に感じている罪に焦点を当てた展開が戦いの中に描かれているのが本当に素晴らしい。

 「インデックスの愛した上条当麻」の記憶を持たず、嘘をついている自分に、彼女を守る資格があるのか。多くの妹達を殺し、血に汚れたこんな「悪党」が、彼女を守れるはずがない。そんなわだかまった感情を振り切って出された、「守りたいから守る」というたったひとつの、とうとい答え。一通さんの姿を見て、同じように迷っていた上条さんがそれに気づくのも、物語の構造として非常に美しいうえにこれまでの積み重ねがちゃんと活きてきていて感涙してしまうと同時に、作家としての鎌池和馬先生の確かな技量を感じられる傑作。

 

 

 

第3位

新約⑳

新約 とある魔術の禁書目録(20) (電撃文庫)

 旧約と新約では、微妙に面白さのベクトルが異なる、と思っている。旧約はひたすらに真っ直ぐな熱さが、新約には人間が持つ善性と悪性の中での人間賛歌が、それぞれの特徴として存在している。

 その二つのハイブリッドとでも言うべき作品がこの新約⑳である。旧約での第三次世界大戦の時よりもミニマムな視点で描かれる「戦争」、そしてその中で生まれる「無理解」「不寛容」という人間の悪意を、戦争への憎しみで戦う覚悟を「決めてしまう」オルソラを使って描いた後に、そんな彼女と上条さんを「対話」させることで、禁書の中で信じ、唱えられ続けてきた人間の善意の力強さを証明する。それによって互いが互いを高めあっていて、特に上条さんが「最大最強に『わがまま』を貫いてるお前が一番分かってないといけないんじゃなかったのか!!!???」とオルソラに対して呼びかける一連のシーンは、オルソラ=アクィナスというキャラクターの特徴を究極に生かしていて、読む度にボロ泣きしてしまう。全体的に言い回しが分かりにくく、ページ数も多くて疲れてしまうところはあるが、あとがき後のダブルヒーローのかっこよさも天元突破してたし、本当に最高の巻である。

 

 

 

第2位

旧約①

とある魔術の禁書目録 (電撃文庫)

 言いたいことは、ある。沢山ある。全体的に整合性の面がグラついてて、終盤のどんでん返しは雑すぎるし、「まずはその幻想をぶち殺す!」の使い方も取ってつけた感が強いし(ペンデックスの『神よ、何故私を見捨てたのですか』に対する「神様の、思い通りになるという幻想をぶち殺す」なのはめっちゃエモなんだけどやっぱり物語としては不自然さが勝つ)、小説として完成度が高いとはとても言えないものではあるだろう。でも、それ以上のものがあった。上条さんとインデックスのボーイミーツガールが、読んでいる僕の頭を麻痺させてくるのだ。

 とある史上類を見ないくらいのストレートな想いを、インデックスへの恋心を叫ぶ上条さん、彼を巻き込んだことを申し訳なく思いつつも、少しずつ彼に惹かれていくインデックス、感情を押し殺して(かつての自分達に似た)少年の前に立ちはだかるステイルと神裂、その姿に、胸が打たれる。最初の3巻だけにあった誰かが大笑いするお約束(にはならなかった)シーンも今回が一番ハマってて、インデックスを助けられる喜びを噛み締める上条さんの前には、「いや魔術師達ちゃんとインデックスの脳のこと調べなさいよ」という文句も引っ込むのだ。物語上の問題点を勢いでねじ伏せる、という作風は以降のシリーズにも繋がっていくが、一巻の「ねじ伏せ方」に勝るものはないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、第1位は…、

 

 

 

 

 

 

 

 

第1位

新約⑨

新約 とある魔術の禁書目録(9) (電撃文庫)

 ランキングなんてつくったのだから当たり前の話だが、僕は『とある魔術の禁書目録』が大好きだ。本当の本当に大好きで、これからもずっと追いかけていきたいと思っている。ただ、「好き」と「完成度が高い」ということは全く別の話で、エピソード毎に振れ幅こそあるものの、禁書は常に沢山の歪みを抱えている作品である、ということは十分すぎるほどに知っているし、このランキングの中でも何回かそのようなことについて言及している。

 その歪みの象徴が他でもない「上条当麻」というキャラクターで、どこまでもその手を伸ばして、自らが救いたいと思った相手を救う…そんなテンプレなヒーロー像を反映された性格、毎日のように事件に巻き込まれるギチギチスケジュール、もう不死身なんじゃないかと思うくらいの身体能力&再生能力、そして何より、敵やヒロインとの戦いの中で相手の矛盾点や誤魔化している部分を見つけ、そこから説教(?)を食らわせる彼の戦い方は、他の作品のキャラクターとは一線を画していて、禁書独自の魅力として成立していながらも、人によっては受け付けない部分であったのは確かだった。特に、新約に突入してからの上条さんの人間やめっぷりは凄まじく、ギャグシーンをこなし、自分の立ち位置について悩む心理描写がありながらも、どこかロボットじみた感覚があった。それには流石に作者の鎌池和馬先生も自覚していたのか(それとも意図的にやっていたのか)、この新約⑨では、それに対するカウンターが怒涛のように放たれている。

 オティヌスの圧倒的な力により「見方が変わった世界」で、あまりにもメタ的な、ある種の反則的な面から否定され、殺されていく上条さん。あまりにもボロボロで、だがそれでも立ち上がる彼に放たれる追いうち。その末にあった、彼のずっと内に秘められていた慟哭。それを知った瞬間に、読者は上条当麻というキャラクターを真の意味で理解することになる。ラスト付近の禁書らしい熱い展開も、上条さんを理解したことで重みが全くもって異なっているのがすごい。どこまでも悪意的で、どこまでも隙がないエピソードである。

 

 

 

 

 

 というわけで、禁書の好きな巻ランキングでした。文字にしていて初めて気づいたのですが、禁書の全体としての傾向を踏まえた上で語ってる作品が多いですね。禁書は長く続いてきたシリーズではあるものの、旧約序盤は割とパターンが決まってたり、作品そのものも新約に入ってからメタ的な視点から変革を起こそうとしているようなものが出てきている(鎌池和馬先生があとがきで語っている「聖域」とか)から…とか、そんな理由がありそうな感じですが、今回はここで筆を起こさせていただきます。読んでくださった人ありがとうございました!