石動のブログ

アニメやら特撮やら映画やらの感想を書きます。

アニポケSMというアニポケの異端児から読み取る、アニポケというコンテンツの変化

ポケモンゲットだぜ!
 自分の勝手なイメージだが、アニポケという番組は、あまり縦軸が強くない、という印象がある。勿論、XYではセレナというキャラクターがコンテストを通じて少しずつ深みを増していったり、BWではお蔵入りになったプラズマ団VSロケット団の回で壮大な物語がスタートする予定だったり、アニポケだって、旅ばかりではなく、ちゃんとメインストーリーと呼べるようなものがある。ただ、それらはあくまで旅に付随した、悪い言い方をすれば「おまけ」のようなもので、番組のコンセプトは「旅」だったように感じる。その要素を中心にした横軸の強い物語はあまり一般層には受けず、僕のように毎日アニポケを楽しみに待っている人間は、少なくとも僕の周りにはほとんどいない。どちらかというと、「アニポケ見てる」という言葉は、あまり理解されないものだ。



めざせポケモンマスター -20th Anniversary-
 勿論、これまでのアニポケを否定するつもりは無い。その特徴的な作風に惹かれる人もいるだろうし、多くの子ども達はこれまでのアニポケを見てきた。 さっきはつい「一般層に受けず」などと書いてしまったが、それは間違いで、アニポケはずっと、子ども達という「一般層」に楽しまれているのだろう。
 だが、超個人的な事情として、自分がアニポケのそういう話は少しマンネリだなあ、と感じていたのも事実なのだ。メインターゲットである子ども達が楽しめていればそれでいいと思いつつも、変化を望んでいた。



勇気の結晶、リーリエとロコン!
 そしてやって来たのが、現在絶賛放映中のアニポケSMだ。タイトルに書いた通り、この作品はこれまでのアニポケの雰囲気を引き継ぎつつも、独自の路線を開拓することに成功している。デザインや作画の雰囲気もそうだが、何より異なるのはその中身、ストーリーだ。
 これまでとの一番大きな変化は、「サトシが旅をしない」ということ。今回のサトシはポケモンスクールに入学し、他の生徒と共にポケモンについて日々学んでいるのだ。勿論、アローラ地方に定住の地を持っていて、ポケモンセンターに泊まったり、野宿したりすることはない。
 変化はそれだけではない。「物語は基本的に島の中で展開されるので、メインメンバーがガッツリ絡むことが非常に多い」、「ヒロインは三人いる」、「エピソード毎のゲストキャラクターも、同じ島にいるので度々再登場する」、「リーリエの過去、ウルトラビーストなど、長く展開されていく要素ーーーいわば『縦軸』が強い」など、挙げていけばこんなにも出てくる。



ポケットモンスター サン - 3DS
 これらの変化は、何によってもたらされたものなのか。そもそも原作である『ポケットモンスターサン ポケットモンスタームーン』が特異な作品だったのも大きいと思うが、一番の要因はアニポケというコンテンツの衰退にあるような気がする。

 長い間続いてきたアニポケという番組は、近年、その立場を脅かされるとはいかないまでも、見ているだけの素人であるこちら側が勝手に心配するような局面に立たされることが多くなったように思う。マックのカレンダー枠を妖怪ウォッチに奪われ、映画の売上は落ち、そのアニメ自体の評判も(大きなお友達からは)あまり良くなくなった。その程度のことでアニポケが終わることはないだろうけど、制作側も何か危機感のようなものを覚えたのかもしれない。「これを機に挑戦してみよう」という、危機感とは逆向きの気持ちが生まれたのかもしれない。



ミュウツーの逆襲 EVOLUTION
 その詳細はともかく、アニポケは変わった。本編はさっき述べたようや変化を遂げ、映画も従来のような、新しい幻・伝説のポケモンをタイトルと物語の中心に据えたものではなくなった。初代のリメイクをやった『キミに決めた!』、本編とは全く関わらない完全新作である『みんなの物語』、そして最初のアニポケ映画のリメイクであり、ポケモン初の3DCG映画である『ミュウツーの逆襲 REVOLUTION』。その挑戦のどれもが歓迎されたかと言われると、それは違うだろう。でも、本当に、アニポケは変わり続けている。



劇場版ポケットモンスター キミにきめた!

 これからのアニポケは、どうなっていくのだろう。アニメ本編はともかく、映画の興行収入は上がってきてるし、一時的に元に戻るのだろうか。それとも、このまま挑戦を続けるのだろうか。正直、そのどちらにも、微量の拒否感がある。本編にマンネリを感じていた自分でも、映画のコンセプトの変遷によりSMの映画が一度もやらなかったことは普通に残念だったし、かといって前に戻るのも勿体ないようで、なんだかとてもじれったい。アニポケというコンテンツは大好きだし、付き合いもそれなりに長いつもりではいるが、こんな気持ちは初めてだ。

 しかし、それでも、僕はアニポケを追いかけていくのだろう。理由なんて、考えるまでもない。ずっと継続して見てきたからじゃない。大きな信頼を寄せているわけでもない。ただ、全く予想がつかない変化を続けているアニポケが、どんな作品を創ってくるのか。ただひたすらに、それが楽しみなのだ。