石動のブログ

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仮面ライダージオウ38話(カブト編)の雑感

 どうも、石動です。いやー、面白いですね、ジオウ。このブログでは平ジェネFOREVERくらいでしか取り上げたことがないのですが、毎週楽しみにしています。

 ただ、ここ数話、剣、アギト、響鬼、キバと、(恥ずかしながら)自分の視聴したことがないライダーがメインに据えられた回が多く、Twitterなどを眺めながら「作品知ってたらめっちゃグッと来るんだろうなあ」と思っていたわけですね。面白くないわけじゃないんだけど、1クール目よりもレジェンドの要素が強く、見ていた方が語り甲斐があるだろう、と。

 そして、ついにやってきたカブト編。その内容(特に後編にあたる38話)があまりにも衝撃的だったので、こうして文字を入力しているわけです。というわけで、ジオウ38話雑感、行ってみたいと思います。


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 まず手放しで「良かった!」と絶賛できるのが、地獄兄弟こと矢車想影山瞬の扱い。「お前はいいよなあ…」や「笑えよ」、弟塩などのネタ的な面の再現度も素晴らしかったのだが、何より良かったのは、彼らの「続き」がしっかりと描かれていたこと。原典たる『仮面ライダーカブト』において、彼らはネイティブ編の展開のついでのような処理をされてしまい、正直自分は地獄兄弟の落とし所として、「ネイティブの策略によりワーム化してしまった影山を自らの手で倒し、矢車も行方をくらます」という流れはずっと納得がいっていなかった。

 しかし今回のカブト編において、矢車は終盤の自虐的で投げやりなキャラクターのまま、『カブト』における影山の顛末を知りながらも過去に捕われ続ける男として描写されている。影山に至っては、最後まで「影山の記憶をコピーしたワーム」以外の描き方がなされない。最後に矢車さんとの友情が芽生えることもなく、最後まで「もう死んだ」という事実を強調していて、とても上手いなあ、と感じた。他にも、『カブト』本編映像が使われたり、矢車の退場を『カブト』第8話のラストバトルを想起させるような夕焼けをバックにしてみたり、さまざまな演出によって、なんとも曖昧に終わってしまった『カブト』の一要素に、ちゃんと決着をつけることができていたように思う。



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 また、山口監督による演出も見応えがあった。前半とは打って変わって、画面処理を施した主観視点のクロックアップを多用したり、終盤では「破壊された鉄パイプが宙を浮く」というシーンを差し込んだり、『カブト』4話を意識したような雨粒の停止描写を行ったりと、本当に素晴らしい。やはり『カブト』といえばクロックアップなので、様々な方向性で魅せてくれるのは素直に嬉しかった。



第1話
 そしてここからが本題、「加賀美がカブトゼクターに選ばれた」展開の是非についてである。結論から述べてしまうと、僕の意見としては「拒否感もあるが、展開のエモさと『ジオウ』という番組だったから受け入れることができた」といった感じである。つまり、普通に面白かった、と言えるくらいにはこのカブト編を好きになっているのだ。

 正直に話すと、37話の次回予告で加賀美がカブトに変身する可能性が示唆されたことについて、自分はあまりそうなって欲しくないな、と思っていた。加賀美が変身すると見せかけて、シルエットのみの天道総司が現れ、『カブト』1話のように全てをかっさらっていく、という別の展開予想が当たることを望んでいた。というのも、『カブト』本編の積み重ねが、僕がその未来を受け入れることを阻んでいたのだ。

 『カブト』序盤、加賀美は自らの弟の記憶を持つワームを前にして何も出来ず、ただ「カブト、頼む!」と叫んだだけであった。それを聞き入れたカブトによってワームは倒され、そこで自らの無力さを痛感した加賀美は大粒の雨に打たれながら誓う。「強くなってやる!」と。
 そんな加賀美は、『カブト』中盤でまた決断を迫られる。自分を助けてくれた、そしていつか恩返しをしようしていた少年がワームだったのだ。一度命を落とすことでガタックの資格者に選ばれるものの、少年と戦うことへの迷いもあった。しかし、加賀美はカブトを手で制し、自らの手で彼と決着をつけようとする。その方法は、「少年が見たいと言っていた虹を見せてあげる」というものだった。つまり、彼は戦うことを選ばなかったのだ。少年ワームは「甘いね」と加賀美に襲いかかりながらも、最後には彼をZECTの爆弾から守って死んだ。雨とは対象的に燃え盛る炎の中、加賀美は言う。「俺は、俺にしかなれない」。彼は、甘々な自分自身を理解し、天道とは違う道を歩むことを決めた。

 唐突に語ってしまったが、この流れが本当に素晴らしいのだ。炎の中のシーンで加賀美というキャラクターは完成した、と言っても過言ではない。
 だからこそ、天道とは違う道を行った加賀美がカブトになることに拒否感があったのだ。今回に限らず、バトルファイトが終わった『剣編』や、ライダーバトルが再開した『RIDER TIME 龍騎』など、ここ最近のジオウはディケイドとは違った方向性で平成ライダーを破壊してきてるのだが、自分が『剣』本編を未視聴であったことや、『RIDER TIME 龍騎』に至ってはそもそも見れてないということもあって、あまり実感が湧くことがなかった。「思い切った展開だなあ」とは感じていたものの、自分がその破壊のストライクゾーンに入った途端にここまで動揺するとは思わなかったわけである。

 しかし一方で、加賀美によるカブト変身もアリだな、と思っている自分もいたのだ。「かつてはカブトゼクターに選ばれず、無力だった加賀美が、自分の進めべき道を見つけ、長い間歩き続けたことで認められ、カブトに変身する」というのは、別に「俺は俺にしかなれない」展開と食い違っているわけではないし、むしろ王道でめちゃくちゃ熱く盛り上がるだろう、と。そんな自分がいたからこそ、僕はジオウ38話を楽しむことができたのだろう。ここまでめちゃくちゃやってこそジオウだ、という想いもあったし、加賀美が天道のことを想像させるようなセリフを言ったことも大きかったかもしれない。画面には出てこなかったが、天道もちゃんと物語に影響を及ぼしていたのだ。



 というわけで、カブト編雑感でした。本当に語りたいことを適当に詰め込みまくった感じにはなってしまいましたが、『カブト』だからしょうがないよなあ、と開き直っておきます。本編があんな闇鍋みたいなやつなんだから、語る側だって影響を受けるものなのです。